青の、果実。
体育の授業を終えて
教室へ戻ると、制汗剤の匂いが
ぶぁーっと広がった。
シトラス系だったり柑橘系だったり
色々な匂いがして、鼻がつんとした。
「マコ、お前怒られてただろ?」
席に着くとにやにやしながら
光太郎が話し掛けてきた。
「そういう時だけ、ちゃっかり見てるんだから。
お母さんにチクったら許さないからね。」
「 へいへい。
お家では真面目な優等生ちゃんだもんな。」
「うるさいなぁ、もうっ。」
光太郎をあしらいながら
鞄に机の中の荷物を詰め込んで帰りの準備をしていると
ぱっと、たまたま斜め前の方にいる
幡山くんと視線がぶつかった。
わっ…
大きい目で見つめられて
またわたしは緊張が止まらなくて
つい、視線を逸らす。
たまたま、たまたまなのに。
「おい、 何顔赤くなってんだよ。
今日部活終わったらマコん家寄って宿題うつさせてもらうから
よろしくー。んじゃっ!!」
そう言い逃げて、光太郎は教室から飛び出した。
「え!ちょっと!
…あーもうっ、ばか光太郎め。」