青の、果実。
「ねぇ、知ってる幡山くん。
わたし達ね、小さい頃遊んでるんだって。この町で。」
お母さんから聞いた驚くべき話を
わたしは幡山くんに話した。
「小さい頃、遊んでくれてた子がいるとは聞いてたけど、
まさかそれって黒川だったわけ?」
「うん、そうみたいだよ!
あと井草光太郎も。」
わかるかな、わたしの幼馴染みの、と
後から一言付け加えた。
「へぇ、まさか黒川達だったんだ。
それは知らなかったよ俺も。」
幡山くんはその事を知っていて
わたしのお弁当を食べちゃったのかと思っていた。
だけど、何にも知らずに食べていたなんて
やっぱり少し変な人。
「俺さ、小さい頃遊んでたのが
黒川だって事は、本当に知らなかったんだ。」
「うん。」
「けど、二年前かな…。
俺が久しぶりにこっちに三日くらい遊びに来た時、
俺のばぁちゃんがさ
いつもお店に遊びに来る子で可愛い子がいるって話してて、俺と同い年で。」
幡山くんは記憶を辿るように、思い出して
空を見上げながら話した。
「でもその子は友達と来るんだけど
全然笑って無いんだ、って。
幼馴染みの男の子と来る時はそんな事ないんだけど、
他の子と来る時は全然楽しそうに笑わないって、教えてくれたんだ。」
「…。」
わたしはつい無言になる。
二年前って、入学した頃だよね、きっと。
「小さい頃から知ってるから、心配になってるって教えてくれたんだけど。
こっちに転校して、その子が誰かすぐにわかったよ。」
ふと、笑って幡山くんはこっちを見つめた。
どうしてだろう、凄く泣きたい気持ちになるのは。
駄菓子屋のおばぁちゃんがそんな心配をしてくれていた事にだろうか。
そんな人から心配される程、わたしは
笑っていなかったのだろうか。
そんな自分の事にも気付けないなんて、わたしは。