マリオンの塔の物語
目を覚ますと、私は背の低い草の上に横たわっていた。
目の前で、風に吹かれた草がゆらゆらと揺れている。
……えっ………草?
驚いて立ち上がる。
見渡せば、そこにはどこまでも続く、ただただ広い草原があった。
目を疑った。
私は確かに家の二階の窓から落ちたのだ。
水たまりの水が顔にはねて、泥が口に入り、口の中がじゃりじゃりとおかしな音を立てていたのを覚えている。
しかしここは、誓って自分の家などではなかった。
それに体が恐ろしいほどに軽い。
それにどこも痛くないのだ。
二階とはいっても、それほど低くない場所から落ちたのにもかかわらず。