【完】すき、好き、大スキ。
腕を引かれ、璃久との距離が近くなる。
口がつくか、つかないか、そんな距離。
「俺が言ってんは、こういう事やで?」
息がかかり、もう一度腕を引っ張られた瞬間、軽く唇が触れた。
「わかってる?」
離れた目の前の唇が動く。
一気にボッと赤くなった顔で、コクンと頷くともう一度唇が触れた。
もう片方の手が首に回り、体ごと引き寄せられ、どんどん深くなる。
暫くして離れた唇の変わりに、優しく、でも力強く抱きしめられた体があった。
あたしの心臓は有り得ないくらいにドキドキしてる。
だけど、璃久の心音も負けないくらいに速い。
あたしだって高3だもん。
経験はなくとも、知識ならある。
この後の事だって、璃久とならしたい。
そう思っていたのに、ずっと抱きしめられたまま。
勿論、それはそれで嬉しいんだけど。
あ、もしかして、あたしがわかってないって思ってる?
そんなに、あたしのこと大切にしてくれてるの?
そう思っただけで胸がキューンと締め付けられて。
「璃久ー、好き!」
ギュッと抱きしめ返したあたしに振ってきたのは
「……だから、お前わかってへんねん」
そんな小さな声だった。