【完】すき、好き、大スキ。
「あ、一樹! 帰るみたいだよ」
「え? あ、本当だ」
参考書を2冊持った後藤さんがレジに並んでいる姿を指差すと、
一樹も慌てて雑誌を持ってレジに向かおうとした。
「ちょっ! 何してんの?」
「え? 買おうと思って」
「は!? バレちゃうから駄目だよ!」
「え? いや、だってコレ……」
一樹の手から雑誌を取り上げ、
元の場所にしまうと手首を掴んで書店を出た。
「あれ欲しかったのにー」
「かーずーき? 今日は何の用事だっけ?」
「え。あーいやー。わぁってる、わぁってるって!」
苦笑いを零した一樹が、
「あ、あれ」
そう指差したのは、璃久と後藤さん。
さっきと同じ駅前で少し話し込んだ後、
手をあげて帰ろうとする璃久。
その姿を見て、
本当に参考書を買う為だけだったんだ。
大きくなった胸のモヤモヤが少し小さくなった。