【完】すき、好き、大スキ。
塾が終わり、
外に出ようとした俺を誰かが呼び止めた。
振り返ると居たのは、
思ったよりもずっと目線を下げなきゃいけない場所から見上げる女。
あー……見たこと、あるかな?
その程度しか知らない、
全くもって接点のない女だから、
名前が出てけーへん。
まぁ、当たり前のことなんやけど。
「ちょっと、お話いいですか?」
同じ歳なはずやのに、
敬語を使う女は勝田さんって言うらしい。
外へ出て、いつもと逆の方向に曲がる。
だって、いつもと同じ方へ行ったら梢おるしな。
人通りもまばらな場所へ来て、
話って? そう聞こうと思った瞬間
「あ、あの。前からずっと好きだったんです」
いきなりの告白。
正直、ちょっと焦った俺は
「あー……、ごめん」
とだけ呟いた。