【完】すき、好き、大スキ。



「あ、あの」



傘をくるくる回しながら、
いつもの場所に腰掛けるあたしに聞き慣れない声がした。


顔をあげると、


艶のある黒髪を、ふたつに結び。

可愛らしいワンピースを着ているくせに、
それが大人っぽく見えてしまう子が目の前に居た。



あ、この子。



「神楽君を待ってるんですよね?」



そうハニカんで笑った女の子は、
璃久と塾から出て来る女の子だった。



「あ、はい」



相手は中学生だとわかっているのに、
何故か敬語になってしまうあたし。



「今日、日程が変わったんで神楽君、後一時間くらい遅くなると思いますよ」

「あ、そうなんだ」



日程が変わる事なんてあるんだ。



てか、この子。

凄い良い子じゃない?

わざわざ教えに来てくれたんだよね。




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