ラグタイム
「実は今朝、会話を聞いてしまったんだ」

夕貴が話を始めた。

「あいさつしようと思ってホールの方に行ったら、藤本さんと黒崎さんと短髪の男――彼が藤本さんの知り合いの探偵かも知れないんだけど――の3人がホールにいたんだ。

それで兄貴が客の女に手を出して、彼女と駆け落ちをしたって」

「マジかよ…!?」

俺は手で隠すように口をおおった。

「あいつ、いつから客に手を出してたんだよ…」

しかも駆け落ちをしたとなったら大変なことである。

「だけど、何で朝貴のヤツは駆け落ちをしたんだよ?」

そう言った俺に、
「わからない。

兄貴からそう言った話を聞いたことがなかったから」

夕貴が言い返した。
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