ラグタイム
ブロロロ…と音を立てて、2人を乗せたタクシーが発車した。

「はあ、助かった…」

タクシーが見えなくなった後、藤本さんは息を吐いた。

「うまく行きましたね」

あたしも息を吐いた。

「後は別れたとごまかすだけだな」

藤本さんはそう言うと、ネクタイをゆるめた。

「そうですね。

それにしても、いっぱい食べたなあ」

そう言ったあたしに、
「お前、色気がないにも程があるだろ」

藤本さんが呆れたと言うように言った。

「だって事実なんですもの」

そう言い返したあたしに、
「お前が思ったことをすぐ口に出すって言う性格だったってことを忘れてたよ」

藤本さんが言った。
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