ラグタイム
だけど、
「朝貴が駆け落ちをしたと言う事実を知ったら、お前が1番傷つくと思ったんだ。

そう思ったら、騙すことしか考えられなくて…」

頭を下げたまま言った藤本さんの声は震えていた。

「あたし…あたし、知っていました…。

兄貴は失踪をしたんじゃなくて、駆け落ちをしていたと言うことを…」

呟くように言ったあたしに、藤本さんと黒崎さんは驚いたと言うように頭をあげた。

「武人から、聞いたのか?」

そう聞いてきた藤本さんに、
「武人がさっき話をしていたことは、あたしのことだったんです。

あたしがあなたたちの会話を聞いて、それで兄貴が駆け落ちをしたと言うことを知ったんです」

答えたあたしに、
「武人は夕貴をかばったのか…」

藤本さんが呟くように言った。
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