ラグタイム
「最後に、『ラグタイム』で働く条件をいくつか出す」

藤本さんが前置きをした。

あたしはきたとばかりに、深呼吸をした。

車に芳香剤を入れているのか、シトラス系の爽やかな匂いがあたしの鼻に入った。

「1つ目は、彼らに絶対に女だとバレてはいけないこと。

バレた場合は店から出て行ってもうう」

「はい」

「2つ目は、閉店後の掃除がある日は俺か黒崎さんが夕貴を車で家まで送る。

女が夜遅くに出歩くのは危険だからな」

「はい」

「3つ目は、客との恋愛は禁止。

性別がバレたら面倒だし、客の方からアプローチされたとしてもテキトーに流しとけ」

「あの、すみません」

あたしは手をあげた。
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