ラグタイム
ほら、やっぱり…。

あたしは両手で頭を抱えた。

「朝貴、黄瀬さんは本当に申し訳ないと思って…」

「――朝貴さん!」

止めようとした藤本さんをさえぎるように、静絵さんが兄貴の名前を呼んだ。

「朝貴さん、もういいの。

本当にもういいの、ね?」

静絵さんはなだめるように兄貴に言った。

兄貴はバツが悪そうな顔をした後、
「ああ…」

呟くように返事をした。

「よかった…」

その様子に、あたしはホッと胸をなで下ろした。
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