ラグタイム
ポタッ…と、鶏肉のうえに雫が落ちた。

えっ、雨漏り?

そう思ったけど、今日は雨は降っていない。

じゃあ、今の雫は何だって言うの?

そう思った時、
「夕貴?」

藤本さんがあたしの名前を呼んだかと思ったら、こちらに向かって歩み寄ってきたのがわかった。

「どうした?

指でもケガしたのか?」

そう言って、藤本さんはあたしの顔を覗き込んできた。

彼の瞳に、目から雫をこぼしているあたしの顔が映った。

あたし、どうして泣いてるの…?

涙の理由が、自分でもよくわからない。

一体、何があったと言うのだろう?
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