ラグタイム
あたしは藤本さんの顔を見た。

「――妻、ですか…?」

そう聞いたあたしに、
「ああ、俺と結婚して欲しい。

お前のことを一生養って行くから、俺の妻になって欲しい」

藤本さんが言った。

これって、プロポーズってヤツだよね…?

「次のあたしの就職先って、結婚のことだったんですか…?」

続けて聞いたあたしに、
「言おうと思ったのは今日だけど、結婚のことは前から考えていた」

藤本さんが答えた。

「前からって…ええっ?」

「そうだな…。

お前と初めて会った時には、もう考えてた。

朝貴が戻ってきて、お前が『ラグタイム』を辞めることになった時、結婚しようって」

そんな昔から考えていたんですか…?

初めて聞いたその事実に、あたしは戸惑うことしかできなかった。
< 327 / 340 >

この作品をシェア

pagetop