ラグタイム
同じ男なのに、こんなにも違うのか。

そう思いながら青山くんの手を離したら、
「赤川武人(アカガワタケヒト)、年齢(トシ)は君と朝貴と同じ25だ。

シェフ兼ソムリエだ」

テナーボイスで淡々と紹介したのは、中性的なイケメンこと赤川さんだった。

へえ、同い年なのか。

「よろしくお願いします」

赤川さんの前に自分の手を差し出したけど、彼はチラリと一目見ただけだった。

いきなりで、なれなれしかったか…。

あたしはそう思うと、自分の手を引っ込めた。

「自己紹介はこれくらいでいいな。

彼について何か知りたいことがあったら、休憩時間か閉店後に聞くように。

営業時間中は私語厳禁だ」

藤本さんが言った。
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