ラグタイム
藤本さんはチョンと人差し指であたしの頭をつくと、
「注文は間違えなかったし、女性客のアプローチも上手に交わしてたし、よく頑張ったと思う」
と、笑いながら言った。

あっ、若頭が笑ってる。

それも心の底からの笑顔と言う感じだ。

へえ、若頭藤本も笑うんだな。

そう思ったあたしだけど、
「注文を間違えて怒られるのはごめんですし、アプローチに関してはコンビニでもよくあったことだったので…」

照れ隠しをするように言い返した。

「それでも上出来だ。

今日はご苦労だったな」

藤本さんはあたしの頭のうえに手を置くと、クシャクシャにするようになでた。

「わわわっ…」

「朝貴が帰ってくるまでの辛抱だ。

明日もこの調子で頑張れよ」

藤本さんはそう言うと、なでていた手を離した。
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