ラグタイム

離したと言うことは、もう帰ってもいいのか？

そう解釈をしたあたしはクシャクシャになってしまった髪を整えながら、その場から立ち去ろうとした。

ドンッ！

立ち去ろうとしたあたしを引き止めるように、藤本さんの腕が目の前に現れた。

「…えっ？」

な、何ですか？

チラリと前を向くと、藤本さんの整った顔立ちが目の前にあった。

後ろには壁。

横には藤本さんの腕。

えーっと…これが流行語にも選ばれたと言う、女子の憧れのシチュエーションである“壁ドン”と言うヤツですかい？

ドラマやマンガだったら胸がキュンとなるのが当たり前なんだろうけど…何だろうな？

胸が全然キュンとしないのは、あたしに女子力がないせいだと信じたくない。