ラグタイム
どうでもいいことかも知れないけど…この壁ドン、恐怖しか感じられないぞ。

若頭藤本がやってるからなのか?

そう思っていたら、あたしの自由を奪っていた藤本さんの腕が壁から離れた。

「えっ?」

あたしは壁と藤本さんを見比べた。

「もうそろそろ、あいつらの着替え終わったんじゃねーかな」

藤本さんが厨房に視線を向けた。

「着替え、ですか?」

そう聞いたあたしに、
「お前、自分が女だってこと忘れただろ?」

藤本さんが呆れたと言うように言った。

「えっ…」

もしかして、2人の着替えが終わるのを待っていろと言いたかったのかな?

だったら、
「わざわざ壁ドンなんてしないで、口で言えばいいじゃないですか」

あたしは藤本さんに言った。
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