ラグタイム
おじさんが思い出したと言う顔をすると、
「そう言えば、まだ夕貴さんに名前を教えてなかったね」
と、若頭に言った。

「俺には双子の妹がいるって言ったくせに、当人には俺のこと話してなかったのかよ…」

若頭は毒づくように呟いた後、やれやれと言うように息を吐いた。

「申し遅れました。

『ラグタイム』のマネージャーをしております、黒崎和夫(クロサキカズオ)です」

おじさん――黒崎さんが自分の名前を言った後、丁寧に頭を下げた。

「藤本大輔(フジモトダイスケ)、『ラグタイム』の経営者だ」

若頭――藤本さんが毒づくように自分の名前を言った。

毒づくように自己紹介されたのは生まれて初めてである。

…んっ?

この人たちの口から出た『ラグタイム』って、確か…?
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