ラグタイム
「ちょっと待ってよ!

どこに行くんだよ!?」

あたしが声をかけても、兄貴は振り返ってこちらを見ようとしなかった。

「待てよ、兄貴!

なあ、どこ行くんだよ!?」

兄貴の背中が見えなくなって行く。

追いかけたいのに、足を動かすことができない。

石にされたみたいだ。

「兄貴!

戻ってこいよ!

無視するな!」

何度も何度も声を張りあげているのに、兄貴は止まろうとしない。

「兄貴!」

兄貴の背中が見えなくなった。
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