今夜、上司と恋します


「冗談はやめてよ」

「気付けよ、鈍感」

「は?」


眉を顰めながら広瀬を見つめる。
広瀬は顔を俯かせながら話し出した。



「最初は笑顔がすっごい可愛い子だって思った。
緊張して自己紹介してるのが俺にも伝わって来てさ。
それが終わった後に、小声で頑張ろうなって言ったら満面の笑みを向けてくれた。
その時はまだ気になる程度だった。彼氏いたし」

「……」

「それが本格的に好きになったのは、長い事付き合ってた彼氏に振られたって知った時だった。
悲しい筈なのに、笑ってる姿を見た時。
俺なら泣かさないのにって思った」

「……ちょ、っと待ってよ。それって」



声が震えた。

嘘、でしょ?


あの広瀬が?



広瀬は私と視線を絡め合わせる。

それから、ぼそっと呟く様に言った。



「俺はずっと坂本が好きだったんだよ」

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