今夜、上司と恋します
*
私と広瀬は居酒屋を出ると、どちらからともなく手を繋いだ。
それから、ホテルへと向かう。
私は腕時計を一度確認した。
……時刻は21時。
佐久間さんは22時までいるって言っていた。
私が来なかったら、きっと帰るよね。
広瀬の目の前で佐久間さんに行けませんなんて言う事、出来ない。
一方的に待ってるって言われただけだし。
行く必要は確かにない。
ないけど。
私はぶんぶんっと首を振って、佐久間さんの事を考えない様にした。
近くのホテルに入ると、部屋を選んで中へと足を進めた。
二人とも、何も喋らない。
部屋の中に入って、広瀬がガチャリと鍵を閉める。
ベッドまで進むと私はそこへ腰を下ろした。
同じ様に広瀬も腰を下ろす。
ぴったりと私に体をくっつけて、肩に手を置いた。
「……坂本」
私は顔を俯かせたまま。
広瀬は顎を手で持って、ぐいっと上げると私を優しく押し倒しながら唇を重ねた。