今夜、上司と恋します
私は何も言葉をかける事なく、部屋を飛び出した。
ホテルから出て、一人になった私から溢れ出たのは涙だった。
広瀬、ごめん。
ごめん。
傷付けてごめん。
いくら謝ったって、広瀬を傷付けた事実はなくならない。
時間を戻せるのなら戻したい。
戻れたのならば、キッパリと断るのに。
そうしたら、広瀬とは今も笑い合えてたかもしれないのに。
後悔しても遅い。
それから私の涙が止まったのは、10分近く経った後だった。
やっと落ち着いた私は、腕時計に視線を落とす。
時刻は22時過ぎ。
ここから会社までは徒歩で15分程。
行ったって、佐久間さんはいないだろう。
それに、こんな顔だ。
きっと酷く、ぐちゃぐちゃだろうし。
だけど。
佐久間さんに会いたかった。
好きだって思ったら、余計に会いたくなった。
佐久間さんならこんな顔してたって、何も聞かずに抱いてくれるんじゃないかって。
そう思ったから。