今夜、上司と恋します


私は何も言葉をかける事なく、部屋を飛び出した。



ホテルから出て、一人になった私から溢れ出たのは涙だった。




広瀬、ごめん。
ごめん。


傷付けてごめん。


いくら謝ったって、広瀬を傷付けた事実はなくならない。
時間を戻せるのなら戻したい。


戻れたのならば、キッパリと断るのに。
そうしたら、広瀬とは今も笑い合えてたかもしれないのに。


後悔しても遅い。


それから私の涙が止まったのは、10分近く経った後だった。


やっと落ち着いた私は、腕時計に視線を落とす。
時刻は22時過ぎ。


ここから会社までは徒歩で15分程。

行ったって、佐久間さんはいないだろう。



それに、こんな顔だ。
きっと酷く、ぐちゃぐちゃだろうし。


だけど。



佐久間さんに会いたかった。



好きだって思ったら、余計に会いたくなった。


佐久間さんならこんな顔してたって、何も聞かずに抱いてくれるんじゃないかって。


そう思ったから。
< 109 / 245 >

この作品をシェア

pagetop