今夜、上司と恋します

「……どうした?」



驚いた顔で私を見つめている。

だけど、それに返事する事はなく私は疑問をぶつけた。



「何で、いるんですか」



だって、いないって思ってた。
てっきり帰ったって思ってた。


なのに、何でいるんだろうか。


ふっと笑うと、佐久間さんは少しずつ私に歩み寄る。



「……帰ろうと思ったんだが、その途中何故か坂本が来るんじゃないかって引き返してきた。
もう少し待ってみようと思ってな。どうやらこの選択は正解だった様だ」



そうやって、優しく微笑んだ佐久間さんは私の目の前に立つと涙を手で拭った。



「……佐久間さんっ」



さっきから涙が止まらない。
自覚したって、もう報われる事なんてないのに。


佐久間さんには好きな人がいるのに。

それはきっと、永戸さん。



好きだって思ったって、何度抱かれたって。


永戸さんには勝てないのに。



くしゃって顔を歪めて、涙を流す私に佐久間さんも困惑してる様だ。

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