今夜、上司と恋します

「3時5分です」

「そうか」


一通りメイクを拭い終えると、それをゴミ箱へと捨てる。
それから、目を冷やす為にタオルを濡らしに行こうと立ち上がった時。


ぐっと手首を掴まれた。



「っ」

「坂本」

「……、今、目が腫れて酷いので見ないで下さい」

「気にしない」

「私が気にします!」

「……わかった」



スッと離された手。
解放されたのに、何故か私の胸はチクリと痛んだ。


すぐに洗面所へと向かい、蛇口を捻ってタオルを濡らす。


再度、自分の顔へと水をかける。
お願いだから。
熱くなった頬を冷やして。


濡れたタオルで目を冷やすと、また涙が滲んだ。



ただの同情なのに。
私を憐れんでるだけだって、わかってるのに。


心が追い付かない。

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