今夜、上司と恋します
暫くしてから、タオルを放して鏡を確認する。
少しだけ腫れは引いていた。
少しだけだけど。
「そっち行っても、いいか?」
「っ」
声をかけられて息を呑む。
どっちにしろ、これ以上はここでは無理だろう。
それにずっとここにいる事も出来ない。
だから、私は「大丈夫です」と返事をした。
佐久間さんは下だけちゃんと履いて、シャツは羽織ってるだけだった。
私に近付き洗面所まで来ると、顔を洗う。
私は自分の顔が見えない様に、なるべく逸らした。
渇いたタオルを取ると、濡れた顔を拭う。
それから、私を見た。
「……」
頬をするりと佐久間さんの手が滑って行く。
「さっきよりは引いたな」
「っ!み、見てたんですか!」
「……」
「最悪です」
マズイって顔をしてる佐久間さん。
寄りに寄って、あんな酷い顔を見られるだなんて。
歴代ベストスリーに入るぐらい酷かったのに。