今夜、上司と恋します
「坂本が思ってるより酷くなかった」
「嘘です、酷かったです」
今は違う意味で泣きそうだ。
「本当だ」
そうやって、困った顔で私のフォローをしようとしてる佐久間さんが何故か面白くて、私はぷっと吹き出した。
「すみません。佐久間さんが一生懸命だったから、つい」
そう言うと、佐久間さんは呆れた顔で息をつく。
「全く。泣いたり怒ったり笑ったりと、忙しいヤツだ」
「そうですね」
「もう平気か」
何度も何度もそう尋ねられた。
佐久間さんには相当心配をかけたに違いない。
素っ気なくて、冷たい様に見えるけど。
本当はすっごく優しい人なんだ。
「はい、もう平気です」
「そうか。よかった」
「どうしますか?もう出ますか?」
「そうだな。送って行く」
「……はい」
私達はそれから洋服を身に纏うと、ホテルを後にした。
大通りに出ると佐久間さんはタクシーを呼んで私を乗せる。