今夜、上司と恋します
「まあ、蛍の場合そうなっちゃうのもわからなくはないよねえ」
「でしょ?」
「結婚は?願望がないわけじゃないでしょ?」
「……そりゃあ人並みにあったけど」
会社でチヤホヤされる年齢じゃない。
それなりに後輩もいて、責任だって付いて来る。
その後輩達が寿退社するサマを、何度も目にした。
もちろん、それを祝福してる。
だけど、一人。また一人といなくなっていく度に、ギシギシと何処か心が軋んで行った。
その中での彼との別れは、私にトドメを刺した。と、思う。
「そういう美沙都は?どうなのよ、涼君と」
「いやー普通。ぼちぼち」
「……嘘つけい。さっきから見えてるんだよ、それ」
「でへへ」
「その笑い気持ち悪いわ」
口を尖らせながら言うと、美沙都は更に声を上げて笑った。
その美沙都の左手薬指に光るそれ。