今夜、上司と恋します



俯く私に、更に彼女は厳しい口調で続けた。



「どうやって佐久間さんに取り入ったんですか?」

「と、取り入るだなんて」

「だって、急に坂本さんを連れてくなんておかしいじゃないですか」

「……」



それは私が聞きたいぐらいだ。
ずっと永戸さんと一緒に外回りをしていたから、パートナーを突然私に変更するなんてこっちが嘘だと思ったんだ。



「……ミスはしないで下さいよ」

「え、あ、うん」

「聞いた事ありますから。以前、坂本さんは大きなミスをした事があるって」

「……それは」

「佐久間さんの足を引っ張る様な真似したら、私許さないですから」

「……」



私の事をキッと睨みつけると、永戸さんはヒールをカンカンと鳴らして自分の席へと向かった。



参ったな。
菜々ちゃんの時のミスが永戸さんの耳に入ってるとは。



確かに、もしも今私がミスをしてしまったら。


その責任は全て佐久間さんにいってしまう。


……絶対にミスは出来ないな。
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