今夜、上司と恋します
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駅から店に向かう途中、若い女の子を結構見かけた。
まさか、この子達ってうちのお店が目当てなのかな。
その予想は見事当たっていて、私と向かう場所が一緒だった。
そのエスレール入口には既に長蛇の列が出来ていて、私は目を真ん丸にした。
話を聞くと、どうやら先頭は始発で来たらしい。
驚いたけど、単純に純粋に嬉しかった。
来てよかったって思って貰えるといいな。
私が今までやって来た事を、評価して貰えた様な気がする。
列に並んでる子達を見て、自然と笑顔になった。
どうにか店舗には8時前に到着して、私はホッと胸を撫で下ろす。
お店には既に佐久間さんがいてエスレールの人と話していた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
私は駆け寄ると、佐久間さんとエスレールの社員さんに挨拶をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「凄かったです。長蛇の列が出来てました」
「本当に。結構ノベルティのジュエリーボックス目当ての方が多いんですよ。
うちにもよく問い合わせ来てました。
これは坂本さんの案だって聞きましたが…」
「そんな…、恐縮です」
「ああ、そうだ。あれは業界からも評判がいい。
坂本のアイディアのお陰だな」
「……妥協しないでやって来てよかったです」
「ぜひともまた坂本さんにお願いしたいですね。
では、私は他に行くとこがあるので。これで。また」
「はい!ありがとうございました」
私は深々とお辞儀をして見送った。
それからバッと顔を上げて、佐久間さんを見ると佐久間さんは優しく微笑みながら目を細めた。