今夜、上司と恋します
私が目を覚ましたのは、どこかの一室だった。
ソファに横になっていて、冷たいタオルが額にあてられている。
段々と意識がしっかりして来て、事態を把握した私は慌てて起き上がった。
だけど、急に起き上がった所為でまた視界が眩む。
頭に手をあてて、眉根を寄せていると低い声が響く。
「起き上がるな。睡眠不足と疲労の所為だ。
横になっていればじきに良くなる」
「……さ、くまさん」
そこにいたのは、佐久間さんだった。
他には誰もいない。
「いいから早く横になれ」
「……はい」
素直に横になると、佐久間さんは落ちてしまったタオルを拾い上げてそれを洗いに行く。
しっかりと絞った後、私の額にまた乗せた。
それから、近くに置いていた丸椅子に座ると佐久間さんは険しい顔をしながら口を開いた。
「少し休めって言ったのに、無理して起きてたんだろう」
「……はい」
「一人で全て作業するなんて、無謀すぎる。間に合わなかったらどうするんだ」
「……すみません」
何かが私の体にかけられていて、それをきゅっと掴む。
怒らせたよね。
そりゃそうだ。
オープン当日、しかも開店間近だっていうのに倒れるだなんて。
いつもなら徹夜ぐらいで倒れたりしないのに、連日の疲れが溜まってた所為だな。