今夜、上司と恋します

佐久間さんは相変わらず、険しい表情をしている。
居た堪れなくて、私は手に力を込めた。



それで私は気付いた。
あれ?
今私にかけられているのって、佐久間さんのスーツ?


よくよく見たら、佐久間さん上着着てない。
……こんな事で嬉しくなるなんて。

本当に単純だ。



「何を笑っている。俺は怒っているんだぞ」

「っ。はい、すみません」



どうやら、口元が緩んでいたらしい。
厳しい言い方をされて、シュンっとなった。


佐久間さんの方を見る事が出来ない。
今、何時なんだろう。


もうオープンしたよね。
佐久間さん行かないとダメなんじゃないのかな。



「……佐久間さん、行って下さい。私、一人で大丈夫ですから」

「ダメだ。坂本は無理をするから」

「無理しません。流石に辛いので、素直に寝ます」

「……」


その瞳は全く信じていない。



「絶対です。絶対。なんなら、ちゃんと寝てなかったらクビにしてもいいです」

「……わかった」



そう言うと、佐久間さんはガタっと立ち上がる。
そのまま出て行こうとしたから、私は慌てて引き留めた。

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