今夜、上司と恋します
「佐久間さん、上着!」
「ああ、それはいい。かけていろ」
「でも」
「いいから、寝ろ」
「……はい」
そう言われては頷くしかない。
本当に佐久間さん、怒ってたな。
心配かけまくっちゃったよ。
重い腕を上げながら、腕時計を確認する。
……ああ、もうオープンしている。
きっと大盛況で、忙しい中声を出しあっているんだろうな。
見たかったな。
嬉しそうに商品を選ぶお客さんの姿。
ただただ、悔しかった。
自分の招いた結果だけど、それが悔しかった。
涙が滲んで来る。
ああ、もう情けない。
こんなとこ、誰かに見られたら困る。
私は涙を拭うと、目を閉じた。
今は眠ろう。流石にもう佐久間さんを怒らせたくない。
色々ボロボロなのに、これ以上怒られたらかなり落ち込みそうだ。
私は疲れていた事と、寝ていなかった事もあり、瞼を閉じたらすぐに睡魔が襲って来て夢の中へと誘われた。
それからどのぐらい経っただろうか。
何やら、話し声が聞こえて来て私は薄らと目を開ける。
「佐久間さん」
この声は。
……永戸さん?