今夜、上司と恋します

ついたての奥にいて、二人の姿はシルエットでしか見えない。
私は腕時計で時間を確認する。


ああ、もう16時だ。
店舗も落ち着いたんだな。


だから、佐久間さんは様子を見に来てくれたんだろうな。



「彼女は?」

「寝ている」

「そうですか」


薄らと開けていた目を私は慌てて閉じた。
だけど、二人の会話はいやでも聞こえて来る。


聞きたくなくても聞こえて来てしまう。



「今日は大成功でしたね、お疲れ様です」

「ああ、永戸もお疲れ様」

「いえ。佐久間さんがいたからです」

「俺も助かったよ」

「違います。そういう意味じゃないです」

「え?」



ドキンっと心臓が跳ねた。
まさか。



「私は佐久間さんの事が好きなんです。だから、佐久間さんの為なら頑張れたんです」

「……永戸」

「佐久間さんは私の事、どう思ってますか?」

「……俺は」



嫌だ。
聞きたくない!


今佐久間さんから、俺も永戸が好きだったなんて聞いたら。


私、立ち直れない。


咄嗟に耳を塞いで、佐久間さんの上着を頭まで被った。
ドキンドキンとうるさいぐらいの心臓の音だけが響く。
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