今夜、上司と恋します
ほんの一分ぐらいだっただろうけど。
私には数時間にも感じた。
もう大丈夫かと思って、そっと手を離すと二人の声は聞こえなくてホッとした。
二人ともどこかへ行ったらしい。
頭に被っていたスーツを元に戻すと、部屋を見渡す。
誰もいないみたいだ。
私はゆっくりと体を起こして、俯いた。
……まさか、告白の場面を目の当たりにするなんて思わなかった。
声でしか聞いてないし、全部聞いていたわけではないけど。
わかっていても、直接永戸さんの気持ちを聞いてしまったら無理だと思った。
もう、関係なんて続けられない。
元々、佐久間さんの好きな人と佐久間さんが結ばれたら終わりにしようと思ってたんだ。
その時が来ただけ。
その時が来ただけなんだよ。
顔を俯かせているとガチャリとドアが開く音がして、ビクッとしながらそっちを見た。
シルエットが段々と近付いて来る。
その、ついたての奥から顔を覗かせたのは、……佐久間さんだった。