今夜、上司と恋します
『あー!もしもし、坂本?』
「どうしたの、広瀬」
『ちょっと、お前大丈夫かよ!』
「え?」
『電話あったんだよ、佐久間さんから。
お前が倒れたって聞いて、それから何度も電話してたんだ』
「……いつ?」
『午前中。流石に俺もこっち抜けられないしで、すっげえ心配してたんだよ』
「そうだったんだ。もう平気だよ。睡眠不足と、疲労みたい。
ゆっくり寝たら、元気になったから。心配かけてごめんね」
『いや、元気になったならいいけど。
睡眠不足って、オープン前日に何夜更かししてるんだよ』
「いやあ、ちょっとね」
私はあははって渇いた笑いを零す。
すると、広瀬が何やら真面目な口調で言った。
『……何?まさか、なんかトラブってたわけ?』
「ああ、うん。ちょっと。あ、でも私がミスっただけだし」
『何したんだよ、正直に言ってみろ』
「……ノベルティのショッパーの紐を通してなくて、更には納品してなかったっていう」
『……』
私がおずおずとそう告げると、広瀬が絶句しているのが通話口から伝わって来た。
どうやら言葉を失っているらしい。