今夜、上司と恋します



「何で気付かないかなあ。
それってあわよくば、告白を坂本に聞かせたかったって事じゃねえの?」

「……そんな」

「それほど自信あったのかもな。いや、そうでなくても永戸は自信たっぷりか」



皮肉っぽく言い放つと、広瀬はハッと嘲笑した。



「んで。佐久間さんはなんて答えたの?」

「……聞かなかった」

「え?聞いてねえの?なのに何で付き合ったって…」

「聞けなかったんだよ。怖くて。
佐久間さんの口から、永戸好きだなんて言葉。聞けなかった」

「……それをお前が言うか」

「あ」



広瀬は眉を下げて、あははって笑った。
だけど、全然うまく笑えていない。


広瀬は私の事が好きなのに。


私、広瀬に言った。


佐久間さんが好きだって。
佐久間さんとは言ってなくても、その人が好きだって事を。



「ごめ」
「謝るなよ?」


ごめん、そう言いかけた言葉は広瀬によって遮られた。
うっと私は口を噤む。



「責めてねえから。いや、責めてるのか。俺もよくわかんね。
けど、平気。悪い。今言う事じゃなかったな。
……そっか。だけど、それ付き合ったかどうかわかんねえじゃん」

「きっと、付き合ったよ」

「何でそう思うんだよ」

「だって、私佐久間さんに関係を終わりにしようって言ったんだ」

「っ!」

< 166 / 245 >

この作品をシェア

pagetop