今夜、上司と恋します
広瀬は目を真ん丸に見開くと、私を射抜く様に見つめた。
そんな広瀬に少しだけ苦笑しながら、私は続けた。
「だけど、佐久間さんはあっさりと。
わかったってそれだけ私に言ったんだよ」
「……」
「引き留めてもくれなかった。確かに、突き放す言い方したのは私だけどさ。
少しは何かリアクションしてくれるんじゃないかって思ってた。
でも、佐久間さんは私の事、何とも思ってなかったんだよね」
「……バカ、だな」
「うん、バカみたいだよ。私」
広瀬はくっと苦しそうな顔をする。
どうして広瀬がそんな苦しそうな顔をする必要があるの。
あまりにも広瀬が泣きそうだから、私泣けないじゃない。
私が泣いたら、広瀬まで泣いてしまいそうだ。
広瀬の顔を見ながら、私はやっと異変に気付いた。
……さっきから、何かにおうなって思ってたけど。
もしかしてだけど。
「そういえば、広瀬」
「……何」
「焦げ臭くない?」
「……ああああ!!」
広瀬はハッとすると、立ち上がり急いでキッチンへと向かった。
だけど、時既に遅し。