今夜、上司と恋します


「っと。もうこんな時間か。俺、帰るわ」

「え?」

「明日も早いし。ここに来たのは、坂本に飯食わす為だから」

「…広瀬」

「目的は達成したし。体調良くないのに長居もな。
今度の休み、お台場でめっちゃストレス発散しようぜ」

「お台場でストレス発散出来るの?」



あそこってそういう場所じゃない気がする。



「するんだよ。買い物とかしてさ」

「はは。いいね」

「な。だから、それまで頑張れ」

「うん!」

「じゃ、会社でな」

「今日はありがとう」

「ん」


広瀬はニカって歯を見せて笑うと、玄関の扉を開ける。
私はそれを笑顔で見送った。


パタンと扉が閉まった後も、私が憂鬱な気分になる事はなかった。


それは広瀬のお陰だった。

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