今夜、上司と恋します
それは小さな紙袋。
綺麗にラッピングされている。
私は意味が分からなくて、それをまじまじと見つめた。
「それは…、今回のオープンが成功したら渡そうと思ってな。
まあ、色々あったし、あれから俺も何かと忙しくて渡しそびれていたんだ」
「……え?」
私への、プレゼントって事?
心臓が変に騒ぎ出す。
ドクンドクンとうるさい。
「話ってのはそれだけだ。広瀬と話してたとこ、悪いな。それでは、これで」
「……」
私からは何も言葉が出なかった。
どうにか絞り出す事が出来たのは、「はい」の一言のみ。
佐久間さんは立ち上がると、扉へと向かう。
そして、ノブに手をかけた時、動きを止める。
「あ。要らなければ捨ててくれて構わない。
ただ…、出来る事なら捨てないでくれると嬉しい。
坂本はそんなモノ、貰っても迷惑かもしれないがな」
そう言って、扉を開けて出て行った佐久間さん。
暫く、私は何も考えられなくて放心していた。