今夜、上司と恋します



「……く、っ、…ふ……」



ぎゅうっと強く手の平を握り締める。



何で。
何で、こんなモノくれるの。



私はもう佐久間さんの事諦めなきゃならないのに。



あんな些細な事を覚えててくれて。
更にはプレゼントしてくれるだなんて。



スーツで買いに行ったわけ?
佐久間さんがこれを買いに行ってる姿を想像しただけで、胸がきゅうって締め付けられる。



「……好き、だよぉ……」



私の口から漏れた言葉は、静寂に飲み込まれていく。




佐久間さん。

好きでいても、いいですか。




もう。何も望まないから。
見てるだけにするから。



だから。



未練がましく、好きでいても―――――いいですか。


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