今夜、上司と恋します
何を、言ってるの?
私はあんなに拒絶したじゃないか。
腕を振り払って、拒絶した。
飽きただなんて、心にもない事を淡々と伝えた。
なのに、“会いたい”ってどういう事。
「何を、言ってるんですか」
声が震える。
お願いだから。
もう、放っておいて。
私に構わないで。
「……っ」
佐久間さんの顔を見る事が出来なくて、私は顔を逸らすと急ぎ足でマンションの中へと向かう。
涙を堪えながら、佐久間さんの横をすり抜けようとした時。
パシィっと佐久間さんに腕を掴まれた。
振り解こうとしても、離してはくれない。
「坂本」
ああ。その低くて響く声が好きだ。
優しい手も、色っぽい体も。
好きだ。好きで好きでどうしようもない。
だけど。
「……佐久間さんと、一緒にいるの辛いです…」
――――もう限界だ。