今夜、上司と恋します
「ああ、時間だ。行って来る」
「行って来い。あ、坂本」
「ん?」
そう言うと、広瀬は私の手に何かを乗せた。
それは飴玉だ。
いちごみるくの。
「糖分摂って頭働かせな」
「……さんきゅ」
こうやって、たまに優しくされると調子狂うのだけどね。
飴をポケットにしのばせると、私は資料を持って会議室に向かった。
「失礼します」
中に入ると、課長筆頭に既に数名が座っていた。
少しだけ張り詰めた空気に、緊張も高まって行く。
椅子に座ってから、佐久間さんをちらっと見てみるがこっちを気にする素振りすらない。
入って来たのに、目すら合わない。
眉間に皺を寄せて、腕を組んでいる。
私が資料を広げていると、隣に座っていた係長の市川さんが話しかけて来た。