今夜、上司と恋します
「それに…、広瀬と仲が深まってる気がしたしな。
だから倒れた事とかも連絡したんだ。俺よりも広瀬がいた方が、きっと坂本は嬉しいだろうなと」
「……」
その時には、私は佐久間さんを好きだって自覚してたのに。
そんな事想ってたんだ。
佐久間さんは私からハッキリと好きな人はいないと聞いてるから。
だから、私以上に自分を好きだなんて思わなかったんだ。
ああ、もう。それならプレゼント渡した後に言った言葉だって、全て納得いくじゃないか。
「保管庫で、そのネックレスをしてるのを見た時。
……坂本も俺を好きでいてくれるのかって少しだけ思った。
だから、ああやって答えた」
そう言うと、佐久間さんは肌蹴た格好で私に顔を近付けると、ちゅっと唇を重ねた。
唇が離れて、私はぽつりと呟く様に尋ねる。
「……好きだったから、キスマークつけたんですか」
佐久間さんはその言葉に目を瞠る。
「気付いてたのか」
「友達に言われて、ですけど」
「そうか」
「独占欲だったんですか」
「……そうだ」
「何で、私を抱く時だけ“蛍”って呼ぶんですか」
「……この時だけは俺のモノって思えるだろう?」
「……」
「まあ、坂本は一度も俺の名前を呼んでくれなかったけどな」
「気付いてたんですか」
「気付かないとでも思ったのか」
「思ってました」
「ふっ、バカにするな。そこまで鈍くない」
ニヤリと口角を上げる佐久間さん。
そっか、お見通しだったんだ。