今夜、上司と恋します
「え。なんですか。何かあるんですか?」
そう尋ねるけど、佐久間さんは視線を逸らすだけだ。
どういう事?
寝顔見せなかった理由があるって事?
え。え?
私は何でですか?どうしてですか?って顔で佐久間さんを見る。
佐久間さんは少しだけ黙っていたけど、観念したらしく口を開いた。
「……寝顔を見せなかったんじゃなくて、な」
「はい」
「……蛍の寝顔が可愛くて…、だな」
しどろもどろで言う佐久間さんに、私の顔に熱が集まって行く。
「そんな時以外堂々と顔を見る事が、出来ない…からな」
佐久間さんは照れ臭そうに、ぼそっと言った。
「……だから、宿泊なんですか?」
「……追求するな」
「ふ、ふふふ」
「笑うな。会社じゃずっと見る事なんて出来ないから仕方ないだろう」
「そうですね」
「……言えば言うほどに墓穴を掘ってる気がするな」
佐久間さんは眉間に皺を寄せているけど、それが照れ隠しにしか思えなくて私はクスクスと笑った。