今夜、上司と恋します
「噂をすれば」
私たちの前に現れたのは、颯爽と歩く永戸さんだった。
「まーちゃん!」
野々村さんがそう呼びかけると、ぴたりと立ち止まり永戸さんはこっちに近寄って来た。
「哲君!お疲れ!雑誌の取材はこれから?」
「うん、そうそう。これからだよー」
「哲君って本当に老若男女ウケいいよね。羨ましいわ」
「そんな事ないよ、まーちゃん人気には負けるって今話してたとこだし」
「え、何それ」
そう言うと、永戸さんはちらっとこっちに視線を寄越した。
だけど、その視線はすぐに逸らされて広瀬に話しかけていた。
「広瀬さんもまさか、そんな事言ってたんですか?」
「言ってた言ってた。永戸は人気だよなって」
「やだなあ、本当に」
会話に入る事が出来ないまま、どうしようと思ってると後ろから声がかかる。