今夜、上司と恋します
「坂本」
「はいっ」
びくっとしながら返事をして、すぐに振り向くとそこには険しい表情の佐久間さんが立っていた。
……話に夢中になってて、準備してませんでした。
「広瀬たちも、就業中だ。私語は慎むように」
「はい、すみませんでした」
「すみません。佐久間課長っ」
謝罪しても、すぐに顔を上げるのは野々村さんだ。
怒られた後にこんな明るい顔で話しかけるなんて、私には出来ない。
野々村さんだから出来る様なもんだ。
「何だ。野々村」
「そのネクタイ渋いですね。どこのですか?」
「これか?これは先日頂いたものだ」
「え。それって女ですか?」
「性別的にはな」
「性別的って。モテ男は違いますね、本当に」
「野々村が言うと嫌味にしか聞こえないが…」
「えー!?そんな事ないですよー」
「はあ、いいから仕事中だとさっきも言っただろ。
坂本。行くぞ」
「え?あ、はい!」
私は慌ててカバンを持つと、佐久間さんに付いて行く。