今夜、上司と恋します
「今日は直帰予定だから、記入しておくように」
「え。直帰ですか」
「そうだ」
「わかりました」
ホワイトボードの自分の名前の箇所に、これから向かう営業先、エスレール本社→直帰と記入する。
佐久間さんの箇所もちらっと見てみると、同じ様に書いてあった。
相変わらず、佐久間さんの文字は綺麗だな。
文字からも几帳面さが溢れ出ているというか、なんというか。
「坂本、行って来いー」
「蛍ちゃん、行ってらっしゃーい」
広瀬と、野々村さんが笑顔で手を振って来る。
それに返していると、二人の後ろにいた永戸さんとバチっと目が合った。
永戸さんは目が合うと、私をキッと睨みつけてから顔を背けて自分の席へと戻って行った。
……えっと。
あれ?私、何か永戸さんにしちゃったっけ?
全然思い当たる箇所がないんですが。
おかしいな。
気の所為かな。
……気の所為って事にしておこう。
怖いから。うん。
私は無理矢理納得させて、佐久間さんを急いで追い掛けた。