今夜、上司と恋します


「どうだった、今日は」

「……正直、大変でした」

「そうか。それはじきに慣れる」

「それと、佐久間さんがあんなに笑ってるとこ初めて見ました」

「……」


私がそう言うと、佐久間さんは目をぱちくりとさせる。
それから、あははっと声を出して笑った。



「俺をロボットか何かだと思ってるのか、坂本は」

「違いますけど、会社だとあんま笑わないから」

「会社で俺が愛想振り撒いてたら怖いだろう」

「……確かに」



少しだけ想像してみる。
が、その姿はちょっと怖い。



「取引先に笑顔を見せるのは当たり前の事だ。
全てが円滑に進む」

「そうですね」

「坂本は緊張してたから顔が強張っていた。
次からは気を付ける様に」

「はい、すみません」

「…と、ダメだな。もう仕事は終わったのに、いつまでもこんな話して」


そう言うと、佐久間さんはウーロン茶をごくっと口に流し込む。
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