今夜、上司と恋します

「……とは言ったモノの、坂本が好きそうな会話が思い浮かばないな」

「えっ、私のですか」

「広瀬とかならすぐに浮かぶんだろうが」

「何でそこで広瀬が出るんですか」

「坂本は広瀬と仲が良いだろう」

「仲良いっていうんでしょうか。あれは」



いい感じに虐められてるけど。
からかう対象としか思ってないだろう、あいつは。きっと。



首を捻る私に、佐久間さんはくくっと喉を鳴らす。



「まだまだ坂本も広瀬も子供だな」

「どうしてですか。広瀬はわかりますけど」


ムッとしながらそう返すと、佐久間さんは可笑しそうに笑った。



「そういうとこが、だ」

「……」


すぐムキになるとこって事か。
こればっかりは何も言えない。


さっきのスタッフにもイラってしてしまったし。
するりと交わせない自分がいるからなあ。


佐久間さんがああ言ってくれなかったら、皮肉の一つでも言ってしまってただろう。